狭心症とは

心臓に酸素や栄養を送る冠動脈に脂肪が降り積もったり、痙攣を起こして血液の流れが充分でないと起こります。
胸が痛くなって病院にかかろうと考えたとき担当医に次のことを伝えてください
経験のある医師は、症状で8割程度は診断がつきます

1)いつ: 朝、昼、夜、時間に関係なく
2)どこで: 駅の階段で、坂道で、会社で、畑で、布団の中で、居間で、
など
3)何をしていたとき: 就寝中、歩行中、仕事中、布団を上げて、入浴中、食事中、
など
4)どこが: 左胸が、のどが、心窩部が、など(指でさせるか、広い範囲か)
5)どのように: 圧迫される、重い、締め付けられる、ちくちく、
など
6)随伴症状: のど、あご、左の肩や腕への放散痛、めまい、
など
7)持続時間: 数秒、数分、数時間、一日中、
など
8)危険因子: 家族に脳卒中や心筋梗塞などの人がいた、タバコを吸っている、糖尿病、
         コレステロールが高い、高血圧、
など

心臓には痛みを感じる神経はなく、正座後に足がしびれるのと同じ感覚を自律神経が漠然と脳に伝えるので、
一点を指させる痛みや、2〜3秒の痛みならば、ほとんどの場合狭心症ではありません。


不安定狭心症

心筋梗塞になりやすい狭心症をとくにこう呼びます。
1)最近起こり始めたばかりの狭心症
2)発作の頻度が増加してきたもの
3)安静時にも狭心症が出るようになった。
以上の場合は、不安定狭心症の可能性もありますので、
心臓カテーテル検査をお勧めします。
(不安定狭心症に対する運動負荷検査は、心筋梗塞発症の危険もあります)


そのほかの胸痛をきたす疾患

下記のようにいろいろあります。外来に相談に来る胸痛患者さんの7〜8割は下記によるものです。

1)弁膜症
2)心臓肥大
3)重症な貧血
4)大動脈解離(突然背中をナタでたたかれたような激烈な痛み)
5)食道痙攣、食道炎、消化器潰瘍
6)不安神経症、うつ病、心臓神経症(実は、最も頻度が多いです。)
7)胸郭出口症候群、変形性頚椎症
8)帯状疱疹
9)気胸、肺塞栓症、肺梗塞
10)胸膜炎、肺炎や肺癌の胸膜浸潤  など


狭心症の診断

1)問診:ベテランの医師であれば、症状だけで7〜8割方の確率で鑑別がつきます。
2)夜間中心の安静時狭心症:24時間ホルター心電図
3)労作時狭心症:運動負荷心電図(正診率7割)、
           運動負荷心筋シンチ(正診率9割)

   
 運動直後では、血の巡りの悪いところには薬が入らないことで診断します。


4)冠動脈造影(正診率99%)

   

     右冠動脈          左冠動脈
   ※上は、有意狭窄がない症例です。

狭心症の治療

@薬物
痙攣で一時的に冠動脈が狭くなる
場合では、カルシウム拮抗薬硝酸薬が有効です。
冠動脈の壁の中にコレステロールが降り積もってしまった場合薬で減らすことは
ほとんど期待できません。スタチン系のコレステロールのくすりはその作用が若干
認められますが、個人差があり減っても数%で、即効性のある改善は期待できません。
しかし、スタチンは狭心症悪化や再発の防止には絶大な効果があります。
心筋梗塞予防のための抗血小板薬(アスピリンやクロピドグレルなど)も必須です。

Aカテーテルによる治療(風船や金属の網の筒で拡げる、かんなで削る、ドリルで削る)
や、胸を開いてほかの血管をつなげるバイパス手術があります。
当院では、日本で保険適応となっているほぼ全ての治療が可能です。



ステント(網の筒)の一例:風船に乗っていて、風船とともに血管の内側から広げます。この金属の網は
血管の中に一生残ります。2004年8月末から、再狭窄しにくい薬を塗ったステントも使われています。
ステントは、1〜3ヶ月で、血管の内皮・内膜細胞に覆われ、血液と直接触れなくなります。


ロータブレータ(ドリル)の概念図:ドリルで削った粉は、赤血球よりも小さいので、毛細血管を目詰まり
させにくいとされています。また、硬いところだけ削れ、やわらかい血管の壁を削ることはないとされています。


DCA(方向性粥腫除去術=かんなで削る)については下記の動画をご参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=PzFLlz7r5sA